Yasuko's Room
元アクシス編集長関康子のデザイン寄稿

「ル・コルビュジエの建築に泊まる」 関康子

2004/01/30
ラ・トゥーレット修道院

 リヨン市内からクルマで1時間弱、いかにもフランスといった豊かな丘陵地の一画にコルビュジエの代表作といわれるラ・トゥーレット修道院はあります。ここもかつての僧房の一部を宿泊施設として転用しています。僧房ですから部屋は簡素そのもの。簡単な洗面台、ベッド、収納、机は室内備わっていて、シャワーとトイレは共有です。言うなればユースホステルの名建築版といったところでしょうか。

僧房を転用した宿泊用室内




教会内部

とは言え、朝、昼、夜の3食付きで一人45ユーロは破格の料金といえるでしょう。こちらもダイニングや集会場などの社交(修道院でこの言葉は適切でないでしょう)の場は西側を向いており、夕食時、広々とした丘陵に沈む夕焼けは言葉で表現できないほどの美しさ。夕食前にはドミニク派の修道士が10数人ほどが教会に集まって祈りの歌を捧げます。キリスト教にも宗教音楽にも詳しくありませんが、コンクリートの巨大な空間に男性の力強くも澄んだ声が幾重にも反響し、まさに天上に登って行くようです。
 食事は12人がけのテーブルに自由に着席し、大皿に盛られた料理を取り分けながらいただきます。私たちが泊まったときのメニューは、夕食はパン、飲みやすい軽めのワイン、にんじんサラダ、マカロニグラタン、数種類のフルーツ、朝食はパン、オレンジジュース、ミルク、バターやジャム、コーヒー、ホットチョコレートを自由に取り分けるというものでした。昼食はいただき損ねてしまったのですが、長期の滞在者に尋ねたところ肉料理が出るそうで、多分3食中のメインが昼食なのでしょう。
 さて、この建物は100の僧房、図書館、食堂、教会からなっていています。外見はコンクリートの圧倒的な素材感と大胆な形態から、ある種の威圧感を感じてしまいますが、中に入ると中庭を囲む回廊形式がある伝統的な修道院のプランを踏襲しています。まさに修道院建築という遺伝子を受け継いだ近代建築なのです。それ以外にもコルビュジエならではのアイデアが随所に点在し、それままさに近代建築の「百科辞典」です。
 静かな部屋で読書したり、森に囲まれた田園を散策したり、時間と光によって様々な表情を見せる建物を探索し、ゆっくりとした時間を過ごしたいそんなラ・トゥーレット修道院でした。



連絡先:Couvent de La Tourette
BP 105 Eveux 69591 L’Arbresle cedex
Reception : tel 33 (0)4 74 26 79 99
Culture@couventlatourette.com
www.couventlatourette.com