Yasuko's Room
元アクシス編集長関康子のデザイン寄稿

8人のクリエイターによる遊びの提案  その2  関康子

2004/05/12
「8人のクリエイターが遊ぶ-CONSTRUCTION TOY-遊具展」の作品紹介の続きです。
今、大人たちの間でも話題になっているのが、磁石を使った遊具「マッドマグ」です。マッドマグは韓国のジムワールド社の遊具で、長短2種類のマグネットバーと金属ボールを自由に接続して、四角推や立方体などの基本形態が造形でき、さらにこれらを重ねていくことによって分子構造や複雑な構造物も作ることができるというものです。「マッドマグ」にチャレンジしてくれたのは、韓亜由美さん(ランドスケープアーキテクト)と山中俊治さん(インダストリアルデザイナー)のお2人。

韓さんの「増殖する菌」


山中さんの映像とオブジェ


川上さんの遊具で作った玩具箱


日比野さんのオブジェ

韓さんは、「マッドマグは建築物や多面体などのしっかりした構造物を作るのに適した遊具だけれども、私はその性格を逆手にとって、布地やランドスープのような柔らかで有機的な曲線や曲面を作ってみたい」というアイデアから出発。試行錯誤の結果、30個のステンレスボックスの中に「菌が増殖するイメージ」を連続性ある造形物として創作。ステンレスボックスは鏡のような効果を作り、まるで万華鏡のような不思議で美しく、有機的なオブジェとなりました。

山中さんは、「日頃から最先端技術にどんな形や機能を持たせるか」という発想のデザインワークが多く、今回も「自己増殖するマッドマグ」をコンピュータソフトで再現、その完成形として円状のオブジェを制作してくれました。そのソフトは「Magrid」と名づけられ、まさに科学好きな大人たちの遊びのイマジネーションを限りなく広げてくれる提案でした。

最後の遊具はドイツのローレンツ社製の「ボーフィクス」。ネジ、ナット、穴あきボードなどの木製パーツで構成されていて、数種類ある穴あきボードにネジやナットを嵌め込んで、平面から立体へ、自由な発想で造形作りが楽しめるというもの。これに挑戦してくれたのが川上元美さん(プロダクトデザイナー)と日比野克彦さん(アーティスト)。

川上さんは独自に穴あきボードを制作し、そのボードをボルトとナットでジョイントして、おもちゃ箱を作ってくれました。「小さい頃、玩具を片付けなさいって、親から言われていました」という記憶から、遊具を使って玩具箱を作ってしまおうという斬新なアイデア。組み合わせ次第では、簡単な棚やテーブルも作ることができ、遊具が家具作りのパーツにもなるという、まさに大人が楽しめる遊びです。

日比野さんはアーティストらしく、自由な発想で数種類のオブジェを制作。但し、発想の根底には、ボーフィクスの同じパーツをある規則を持って組み合わせていくことで出来上がったオブジェは、見る側の視点によってさまざまなイメージとして捉えられるという、いかにもアーティストらしい試みでした。大人の遊びは「完成させること」「役立てること」といった意味性を求めてしまうのですが、本来の「遊び」とは目的のない、プロセスに没頭する行為ですから、日比野さんは遊具や遊びの本質にもっとも忠実であったのかもしれません。

子育て中の親に限らず、大人たちが身近に居る子どもたちとある時間を没頭して一緒に遊ぶこと。そんなときに素敵な遊具があれば遊びの時間をより充実したものにしてくれるに違いありません。「物より思い出」という広告コピーがありますが、本当にその通りだなあと思います。
(PHOTO : YASUKO SEKI)