SALONE ARCHIVES in Milan
黒川雅之のサローネ情報

黒川雅之のサローネ情報2007 vol.23
安積伸のデザインの姿勢

2007/04/22
伸さんがネクストマルニの会場に来てくれた。にこにこ笑いながらだがおしかりを受けた。どうして僕の椅子のことが書いてないの?と。昨年の作品とそう変わらなかったからだよ,と言ったのだが気になったから書くことにする。
ここに四つのネクストマルニの安積の椅子を載せる。初めの年に商品化した小椅子(構成された図面付の写真)、そして次が昨年度のアームチェアー。この時に彼はデザインの方針を変えた。アームが付くことで小椅子のデザインが影響を受けたのである。フレームがストレートになっている(この作品はマルニ木工の手違いで会場に展示できていない)。そして、その次が今年のテーマ、ラウンジチェアーの写真である。ここではアームがないのだが初めのフレームには戻っていない。アーム付のチェアーからアームを取り外して大きくしたものである。もう一つの小椅子(真っ正面から見たアームのない小椅子)は、最初に開発した小椅子だけがフレームが三角断面をしていることが気になったらしい、そこでアームチェアーとラウンジチェアーにそろえたストレートにした断面の小椅子をつくりたいと言い出したのである。

こんなことをここに書くのは安積を誹謗しているのではない。デザイナーである安積がそれぞれの仕事になにを考えどう対処して自らのデザインを総合的にまとめていこうかと言う姿勢が見えている。こうして始めの小椅子は村八分になって3つの椅子,小椅子とアームチェアーとラウンジチェアーは統一性を手に入れたのである。

もう一つ、安積の椅子にはなかなか気づかないのだが秘密が一つある。それはアームチェアーになってから、最後の写真にみえるように左右のフレームがお互いに傾きあってきたことである。それが三角断面だった時との相違である。三角断面のフレームだった時にはなかったフレームの傾きが四角断面になった時に必要になったのである。三角断面のときの充実した表現が四角にすることで失われたからである。ちょっと傾けることで三角の時と同様な美の感覚が得られたのだろう。

ついでに一言。今年は安積も参加する或る木製家具の会社がネクストマルニと同様な企画で小椅子を発表している。安積の参加は別に問題はないのだがその中にサナー(妹島和世の組織)とほとんど発想の同じ「ウサギの耳をもった小椅子」が他のデザイナーによって提案されていることである。企画の相似性も重なるだけに気になる出来事である。マルニ木工では不愉快な気持ちを隠していない。