伝統の再編集、「金沢ごのみ」

2007/09/23
日本は世界の他の国と一寸様子が違う。日本独自の芸術があり日本では充分に評価されているのに世界では全く通じないことがあったりする。日本画がそうだし伝統工芸がそうである。着物の職人がどこまで世界で評価されるかというと当然、殆ど無理なように、日本の独自な芸術は日本独自な文化の領域で閉鎖的に育てられ守られて来たために今日まで続いてきたのだが、同時に世界的な評価の域外に置かれている。
茶道の仕掛けがそれを育て、守った重要な思想であり作法なのだが、それも残念ながら新しい時代の波がその質を変えつつある。着物も伝統工芸も日本画もまだその世界は元気に見えて実は産業としては一部を除いて、零落の道を辿っている。
もう10年も前のことなのだが、僕がそれまで続けて来た日本の伝統工芸の世界化の活動が壁にぶつかって方法の転換を迫られていた。どうしても世界の日常生活の経済感覚に合わせようとすると職人達に安い価格での提供をお願いしなくてはならない、結局のところ職人の人件費さえでないものになってしまって市場への侵入の難しさを感じていた。
そんな時に気づいたのがルイ・ヴィトンだった。当時の社長は秦さんといって親しかったので企画書を持ち込んだ。「あなたはこれまでヨーロッパの文化を日本に売って来た、これからは日本の文化も世界に売りませんか?」というものだった。ルイ・ヴィトンは豊かな人達が顧客になっている。この顧客に向けて日本の伝統工芸をその芸術的質に応じて高い価格で販売するべきではないか、と思ったのである。真剣な仕事が生み出した作品だから商品の視点で見てはならない。先ず作品でありそれが商品となりうる状況を逆に探そうというのである。
残念なことにその時はその企画は理解が得られなかった.タイミングの悪さもあったのだろう。

その10年来の夢がやっと実現しようとしている。とは言っても優れた顧客を持たないままに世界に広報活動でマーケットをこれから確保していこうというプロジェクトである。
「金沢ごのみ」というイベントがある。これは金沢市と金沢市の財界・文化人達が企画委員会をつくって金沢の伝統工芸の産業に活力を与えようとする活動の一つなのだがそこに僕がディレクターとして招かれた。僕のディレクションで金沢の伝統工芸を世界化することを目指して、計画を推進している。
僕は長い間デザインの力で伝統工芸を蘇生させようとして失敗して来た。今度はデザインを出来るだけ引っ込めて「伝統の再編集」という視点で世界化を図ろうと考えている。
職人の力を信じて、職人の持つ文化をそっと生かして、編集という手法で再構築しようというのである。

いくつかの伝統工芸の分野を選んで、いくつかの作品が生まれつつある。取り組んでいるのは「金沢漆器」と「金沢小紋」と「桐工芸&蒔絵」と「金箔」と「九谷焼」、それに「加賀縫」と「組子&和紙」である。
この成果は金沢21世紀美術館で開催される「金沢ごのみ展」で発表される。(会期は10月17日から21日まで)。

そして、この作品群を僕が最近始めた「つくりたいものをつくる会社」である、株式会社Kで販売をすることになっている。ここでは日本語、英語、中国語で買うことが出来る、オンラインショップも始めた。www.k-shop.net
まだ、全くマーケットを持たないこの新会社がどこまで目的を果たせるかは分からないが、これも職人達や金沢市とのコラボレーションによる「日本の伝統文化の世界化」の挑戦である。
金沢での前記の展覧会が終わってから販売が開始される。ニューヨークや東京での発表(東京展は、ル・ベインにて10月30日から2週間)や中国に30万部発行するウェブマガジンの広報等で世界に発表していきたい。

ルイ・ヴィトンでは実現しなかった「日本の伝統工芸の国際マーケットへの流通」という念願の課題は少しずつ実現していく。応援を願いたい。
(掲載の写真はその一部です)