K展/黒川雅之の挑戦

2007/09/19
展覧会が始まった。本当は10月31日から始まるル・ベインでの東京展が最初の発表だったのだが、縁あって、オリエンタルホテル広島のギャラリーでのデビューとなった(オープニングパーティーは11月1日)。
以前、曼荼羅紀行で触れたことのある株式会社Kの商品が、アライアンス企業の努力でやっと日の目を見たのである。
9月7日と8日になんとか間に合ってプレスの皆さんと一部の友人達には披露したのだが、こうしてパブリックへの発表は9月14日のこの日が最初だった。当日、オリエンタルホテルのチャペルで展覧会と同じタイトルで講演会が開かれた。100人の収容人員にそれを超える人々が集まってくれた。
僕は「なぜ株式会社Kを始めたか」をここで説いた。
株式会社Kとは一言でいえば「デザイナーズブランド」の開始である。ファッションでは当たり前なのにプロダクトデザインではそれがなかなか生まれない。デザインだけでは絵に描いた餅なのである。どんなに優れたデザイナーでも商品化されなければデザインは生きたまま埋葬されるようなものである。絵画や彫刻は自分の手で作品が生まれる。漆器や陶器の職人も自分の手で作品が生まれるのに、デザインはそうではない。
この苦渋はデザイナーならだれでも味わって来たことなのである。インハウスのデザイナーだって恐らく沢山の作品が生き埋めになっている。

Kとはデザイナーが自分でメーカーになり作品を現実化する会社である。まるで職人のように、しかし、システムでデザインは商品としてこの世に生み出される。システムとしての現代の職人をつくろうというのである。
この仕組みのために素材を知り尽くし、その優れた加工技術を持った多くの企業、メーカーがKに協力してくれている。僕たちは彼らをアライアンス企業として大切にしている。つくり技術を持たないデザイナーがこういったアライアンス企業の力で商品を作ることが出来るのである。

アライアンス企業は開発費から在庫に至るまでハードの作業を負担してくれる。ハードの費用はすべてアライアンス企業の力に助けられているのだ。Kは広報やオンラインショップのシステムの開発やカタログの製作、パテント等の保護、それから営業活動などのソフトな作業を担当する。その費用をKが負担するのである。デザインの組織、ここでは黒川雅之のKスタジオはデザインを担当する。そして、それらは時間を掛けて償却していこうというのである。

普通、こういう外部のメーカーに製造をお願いするのはOEMといって外注と捉えられるのだが、ここではアライアンス関係だから外注ではない。それらの企業はこのKの役員でもある。
こういう関係でのものづくりは「安くつくるための努力を迫ること」がない。「かかっただけを納品価格として請求することが出来る。高くては結局売れないのだから自己調整されるし、コストダウンの努力をしないで質の向上にそのエネルギーをかけることになる。そして、高いけれど高品質の商品がどんどん生み出される。

Kはこのすべての商品にアライアンス企業の名前を刻み、ことあるごとにこの企業の宣伝もする。こうしてアライアンス企業の優れた技術は広報されることになる。

いい品物、究極の逸品だけをつくる、という誓いはこうして実現していくのである。オリエンタルホテル広島での展覧会と講演会は、こうした株式会社Kというビジネスモデルの紹介であり、その仕組みで生まれた作品の紹介でもあった。

広島は僕の企画・プロデュースしたネクストマルニのマルニ木工のある街である。奇しくもこの街でネクストマルニに次ぐ僕の「ものづくりの仕掛け」の挑戦を表現することになった。

10月25日まで開催している。脚を伸ばしてください。そして、10月31日からのル・ベインでの東京展を楽しみにしていただきたい。K展は「ネクストマルニ+K」展として展開される。