器に思う
その六「景徳鎮の逸話4」

2006/11/03
逸話4/<九龍公平杯>の伝説
明の時代のことです。政府は景徳鎮に皇帝のための専門工房として<御窯工房>を開設しました。
その噂を聞いて多くの陶磁器の職人たちが景徳鎮に集まってきました。そこで働きたくても簡単な事ではないのですから選ばれた技師たちは全部優れた技術を持っている技師たちばかりでした。
景徳鎮の県長は皇帝の関心を買おうと<御窯工房>の技師たちに半年以内に<九龍杯>という陶器を作らせるという厳しい命令を出しました。よくできれば賞金を与えるけれど、できなければ厳重に処罰をするというのです。県長は自ら現場にいて監督までしたのです。
<九龍杯>を作るには相当高度な技術が必要です。その上納期も短いので技師たちは寝ても覚めても安らかにはなれません。人々は知恵を絞って、やっと精巧な<九龍杯>ができあがったのでした。
県長は喜んで自ら馬で運び、その陶器を皇帝に差し上げました。その時の皇帝、朱元章は大いに喜んで、景徳鎮陶磁器技師の技術を褒めたたえ、又、その県長は昇進することが出来ました。
皇帝は<九龍杯>を手に入れてからというものそれがお気に入りでこの杯を使う宴会を開いて自分の部下を繰り返し招待しました。
ある宴会の時のこと、皇帝はご機嫌取りの部下には杯になみなみとあふれる程のお酒を注ぎ、正直者で皇帝に忠実な部下には少しだけ酒を注いでいました。
でも、ある時、奇跡が起きたのです。ご機嫌取りの部下は、皇帝にいくら沢山の酒を注いでもらっても<九龍杯>からこぼれてしまって、一滴も飲めません。それなのに少ししか注いでもらわなかった忠実な部下達は喜々として皇帝からいただいたお酒を存分に飲んでいるのです。
その<九龍杯>は<公平杯>とも称するもので、お酒をいっぱい入れれば溢れ、少し入れれば逆にいっぱいになる杯だったのです。
その後、皇帝は「公平」の大切さを教えるために<九龍杯>を<九龍公平杯>と名付けたそうです。
この物語には人は欲張らなければいつまでも飲み水が得られる、でも欲深い人は一滴の水も飲めないという教訓です。