器に思う
その五「景徳鎮の逸話3」

2006/11/02
逸話3/陶磁器の仙人
民国年間に景徳鎮に曾生という人がいました。彼はとても有名な陶磁器職人でした。ただの土が彼の手にかかるとまるで本物のようになるのでした。彼が仙女と花を彫刻すると仙女どころかその周囲に沢山の華麗な花がまるで本物のように香りまで漂って咲き乱れるのでした。こんな優れた腕を持つ職人は生活には余裕があるのだろうと思われるでしょうが、彼はまったくその逆でした。彼の作品は宝物のように高値に売れたのですが、資本家と官僚たちがいろいろな名目で税金を徴収し、ほんの僅かしか残りませんでした。その上、彼は自分より貧しい人たちを援助していつも貧乏でお腹を減らしていました。
ある冬、格別に寒い日、大雪が三日連続に降り続くことがありました。彼は持病の気管支炎が再発して、朝から夜まで咳が止まらず力つきていました。そんな時、ベッドで伏せていると誰かが訪ねてきました。それは二人の部下を連れた県長でした。残酷でその上欲張りな県長は彼のベッドの側に立って曾生にこう言ったのです。「省長が今日、私たちの県に来る。陶磁器の仙人と言われている君に雪漢をつくって欲しい」というのです。曾生はそれを聞いて困り、自分はこんなに重い病気なのだから彫刻どころか起きる力もない。どうか断わってくださいといったのです。でも県長はすぐに怒鳴りたて、部下に命令して無理やりに曾生を部屋から引きずって窯のところへ連れて行きました。

曾生は身体が辛く、こころに深い恨みが生まれました。春になって、曾生の持病もだんだん回復したある日、県長がまた彼の家に来て、自分の顔の彫刻像が欲しいからつくれと曾生につくらせようとしました。曾生は県長のことを恨んでいるのだからそう簡単にはつくるわけにはいきません。それなのに、意外に彼は同意したのです。でも彼は一つの条件を出しました。それはつくる途中に誰も彼の仕事場に入ってはいけないというものでした。県長はおかしいとは思ったのですがその条件を認めざるを得ません。
いよいよ彫刻像ができてくる日、県長はとても興奮して部下たちと一緒に曾生の窯にやって来ました。でも曾生が作ってくれた作品を見てもう死ぬほど怒り出しました。その作品の頭が豚の顔になっていたのです。顔には肉こぶがいっぱいで、それに歯が口から突き出し、本当に醜い顔だったのです。村人たちはみんな大笑いしてしまいました。
県長は部下にその像を壊すように命令しました。でも、奇跡が起こったのです。その像をいくら棒で叩いても壊れない。遂に、県長自身が棒を振るってその像に叩きますが、その像は何事もなかったかのように静かにそこに立っている。そのかわりに県長は痛い痛いと頭を抱えて地面に倒れたのです。県長の部下が再び棒を振って像を叩くとが県長はまた頭を抱えて、地面で転げまわる。「やめてくれ、やめてくれ、痛い痛い」と叫んでいるのです。その不思議な出来事に県長は部下に助けられて起き上がり逃げていきました。
曾生が恨みをいっぱい持ってこの像をつくったので彼の魂が像に詰め込まれてしまったのでした。