Yasuko's Room
元アクシス編集長関康子のデザイン寄稿
対極にある建築見ました<2> アルヴァロ・シザとレム・コールハース
関康子
2005/10/21
カサ・ダ・ムジカ
建物の中には大小2つのホール、そして音楽にまつわるさまざまなサービスルームが用意されています。外観は極めて単純な巨大なコンテンポラリーアートのよう。けれども内部はテーマパークのように現代建築の最先端が「これでもか!これでもか!」とてんこ盛り。こう感じるのは、この建物は、基本的に移動スペース(廊下、階段、エスカレーター)は意図的に狭く、そこを通り抜けると、ポルトの街が一望できるホワイエ、ポルトガルの名産アズレージョのタイルで埋め尽くされた休憩室、澄み切った青空を望む屋上、広がりのある空間が次々と展開されているからでしょう。川端康成さん流に表現するならば「狭いエスカレーターを上りきると、そこはポルトを臨むホワイエだった・・・」という風に、狭い空間、広い空間が自在に組み合わさっています。また各空間は、コールハースさんならではの心憎い、素材使いやディテール処理が施されているのですね。目が回るような建築的な仕掛けが組み込まれており、建築のグローバリゼーションのトップランナーたる作品であろうかと思います。
カサ・ダ・ムジカ、ホワイエ
カサ・ダ・ムジカのエスカレーター
シザのポルト近代美術館
シザの教会外観
教会内部
その日は、それから、シザも教鞭をとっているポルト建築大学、ポルト近代美術館を見るというハードなプラン。1日に5つもの建物を見るとなると、いくら楽しいと言っても、疲労困憊です。ただ、レストランも、プールも、大学も、美術館も、実にすばらしいロケーションの中にあって、白い彫刻のようなシザのミニマムな建物がすばらしく調和しているのです。空間もコールハースさんとは対極で、穏やかで、練られていて、時間とか時代を超越したような静けさに満ちています。
コールハースさんもシザさんも共に世界的な建築家ではありますが、ここに作り手の在り方の対極を感じたのでした。一人は、世界中を駆け回り、時代の価値や潮流を先取りし、リードする。もう一人はポルトという地方都市で、黙々と自分の世界を掘り下げる。でも、リージョナルであればこそ、逆にそれがグローバルな意味を持ってしまう。良く言われるグローバル/ローカルという話ではありますが、プロダクトや情報のように輸送ができない建築なだけに、こうした対比がより鮮明に伝わってくるわけです。そして、50年、100年という時が流れたとき・・・この対極的な建築は、未来に生きる人たちにどう受け入れられるのだろうか?などとも考えてしまうわけです。少なくとも、シザさんの作品は想像できますが、コールハースのさんのカサ・ダ・ムジカは、私の乏しい想像力を超えています。
そして次の日、ポルトから電車で1時間半、さらにタクシーを乗り継がないと行けない、シザさんの教会を見に行ったのでした。




